彼女はマリウポリからやってきた
3,080円(税込)

■著者: ナターシャ・ヴォーディン
■翻訳: 川東 雅樹
■出版社: 白水社


【内容紹介】
半世紀以上を経て娘が探し当てた亡き母の生 ロシアとウクライナの血を引くドイツ語作家が、亡き母の痕跡と自らのルーツを見いだす瞠目の書。
母エウゲニアは、著者が10歳のとき若くして世を去った。幼い娘が知っていたのは、母がマリウポリで生まれたこと、第二次世界大戦中、両親が強制労働者としてウクライナからドイツに連行されたこと、曾祖父が石炭商人、祖母がイタリア人だったらしいことくらい。母の運命を辿ろうとこれまで何度か試みたが、成果はなかった。ところが、2013年のある夏の夜、ふと思い立ってロシア語の検索サイトに母の名前を打ち込んでみたところ、思いがけずヒットする。ここから手探りの調査と驚くべき物語が始まる。
 「ここ一年ほど悲しい姿ばかりが報道されたウクライナのマリウポリだが、その多文化都市としての輝かしい歴史と、そこに生きた作者の親族の運命が、この小説には知的なユーモアと息苦しいほどの好奇心をもって描かれている」(多和田葉子氏)
 ウクライナの船主、バルト・ドイツの貴族、裕福なイタリア商人、学者、オペラ歌手など、存在すら知らなかった親類縁者の過去が次々と顕わになり、その思いもよらぬ光景に著者は息を呑み、読者もそれを追体験する。忘却に抗い、沈黙に耳をすませ、失われた家族の歴史(ファミリーストーリー)を永遠にとどめる世紀の小説。ライプツィヒ書籍見本市賞受賞作。


 【著者プロフィール】

ナターシャ・ヴォーディン 1945年バイエルン州フュルトで、戦時中ドイツに強制労働者として連行されたロシア人の父とウクライナ人の母のもとに生まれる。少女時代を難民収容所で過ごし、母親を早くに亡くしたあと、カトリックの女子施設で育つ。電話交換手や速記タイピストとして働いたのち、ロシア語を学び直し、通訳の資格を取得。1970年代にソ連を訪問。1980年代の一時期モスクワに暮らし、数多くの著名な作家と知り合い、ロシア文学の翻訳を始める。1980年から作家として活動を開始、1983年、Die gläserne Stadt(『ガラスの街』)でデビュー。その後、小説や詩を精力的に発表し、ヘルマン・ヘッセ賞(1984年)、シャミッソー賞(1998年)、グリム兄弟賞(1989年と2009年)、アルフレート・デーブリーン賞(2015年)を受賞。2017年に刊行した本書は高い評価を受け、ライプツィヒ書籍見本市賞とアウグスト・グラーフ・フォン・プラーテン賞を受賞。2019年にはヒルデ・ドミーン亡命文学賞を受賞した。2022年、これまでの全作品に対してヨーゼフ・ブライトバッハ賞を受賞。 川東 雅樹(かわひがし・まさき) 1953年大阪生まれ。1976年北海道大学文学部独文科卒。1980年同大学院博士課程中退。2019年まで秋田大学教育文化学部教授。

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